1.大型ヤッコとは?

スズキ目キンチャクダイ科に属する海水魚の一種で、主にインド洋や太平洋、大西洋などの暖かい海域にあるサンゴ礁に生息しています。

単独行動を好む種類が多く、縄張り意識が強いため水槽内では基本的に1匹もしくはペアで飼育することが望ましいです。

ライブロックに付着する藻類や小さな無脊椎動物をエサとしている種類が多く、中にはサンゴを食べているものもいます。

ヤッコの中でも特に大きくなる種類を大型ヤッコと呼び、大きく2つに分類されます。



2.Pomacanthus属

タテジマキンチャクダイを代表とする大型ヤッコPomacanthus属(ポマカントス属)の仲間で、これに属する幼魚たちはどれも非常に似ていて、黒を基調として白と青の模様が入ります。

飼育自体は容易で初めから人工エサを食べる個体も多く、餌付いていない場合でも冷凍のブラインシュリンプやホワイトシュリンプを与えれば徐々に粒エサを食べ始めます。

水槽の主役として圧倒的な存在感のある魚ばかりで、人慣れするなど賢い面もあり、幼魚から育てることでペット感覚での飼育も楽しめます。

タテジマキンチャクダイ

【学名】Pomacanthus imperator
【英名】Emperor Angelfish
【生息域】中部太平洋・インド洋
【最大全長】約30cm
【飼育難易度】★★☆☆☆
【特徴】タテジマキンチャクダイの幼魚は別名『ウズマキ』とも呼ばれ、Pomacanthus属の中では判別が非常に容易で名前の通りウズマキ状の模様をしています。この模様は成長につれて変化していき、半成魚が通称『ウズキン』として流通することもあります。スリランカ産(インド洋型)の成魚は背ビレの末端が丸くなり、インドネシア産(太平洋型)の成魚は背ビレの末端が伸びるのが特徴ですが、インドネシアは太平洋とインド洋に囲まれているため、一部インド洋型が混じることもあり完全に成長し切るまで判別は困難です。

ブルーフェイスエンゼル

【学名】Pomacanthus xanthometopon
【英名】Blueface Angelfish
【生息域】中部太平洋
【最大全長】約40cm
【飼育難易度】★★☆☆☆
【特徴】別名『アデヤッコ』。ブルーフェイスエンゼルの幼魚は小さいサイズでも成魚の特徴が出ていることが多く、背ビレと眉間にオレンジ色が見られるため判別は容易です。成魚では名前の由来の通り、顔に細かく青い網目模様が入り、青と黄色を基調にした体色が美しい人気の大型ヤッコです。やや気が強い面がありますが、先住魚よりも小さめを選んだり導入する順番を後に回すなどすることで問題を回避することもできます。

サザナミヤッコ

【学名】Centropyge acanthops
【英名】Semicircle Angelfish
【生息域】西部太平洋・インド洋
【最大全長】約40cm
【飼育難易度】★★☆☆☆
【特徴】

ワヌケヤッコ

【学名】Centropyge bispinosus
【英名】Blue Ring Angelfish
【生息域】西部太平洋・インド洋
【最大全長】約40cm
【飼育難易度】★★★☆☆
【特徴】ワヌケヤッコの幼魚は白い帯が細めで、背ビレと尻ビレの末端に近づくに連れてその帯が一部リング状になる点で判別できます。特に似ている幼魚にアデヤッコがいますが、ワヌケヤッコの方が体高があります。大型ヤッコの中でも特に大きくなる種類で、成魚では斜めに入るブルーのラインが特徴的で水槽の主役的な存在感を持つ魚です。やや神経質な面もありますが、落ち着いた環境下で冷凍飼料から慣らし、徐々に人工飼料に移行します。

ロクセンヤッコ

【学名】Pomacanthus sexstriatus
【英名】Six Bar Angelfish
【生息域】西部太平洋
【最大全長】約45cm
【飼育難易度】★★☆☆☆
【特徴】ロクセンヤッコの幼魚は白い帯が太めで、弧の角度が緩くほぼ直線である点で判別できます。大型ヤッコの中でも特に大きくなる種類で、成魚では名前の由来の通り6本のラインが入ります。飼育は容易で安価で流通するため、大型ヤッコの入門種としてもおすすめです。

イナズマヤッコ

【学名】Pomacanthus navarchus
【英名】Majestic Angelfish
【生息域】西部太平洋
【最大全長】約20cm
【飼育難易度】★★★☆☆
【特徴】流通するイナズマヤッコの幼魚は小さいサイズでも成魚の特徴が出ていることが多く、背中にオレンジ色が見られるため判別は容易です。成魚では名前の由来の通り、目の下とエラの後ろに入る稲妻のようなブルーのラインが非常に美しく、水槽飼育下では最大15cm程度と比較的小型なため非常に人気の高いヤッコです。

アズファーエンゼル

【学名】Pomacanthus asfur
【英名】Arabian Angelfish
【生息域】紅海・アデン湾
【最大全長】約30cm
【飼育難易度】★★☆☆☆
【特徴】アズファーエンゼルの幼魚は尾部と背中から腹部にかけて黄色が発現する点で判別できます。近縁種のマクロスエンゼルに似ていますが、本種の体色は濃紺で腹部の三日月模様は背ビレの末端まで伸びず体色との境界がはっきりしています。

マクロスエンゼル

【学名】Pomacanthus maculosus
【英名】Halfmoon Angelfish
【生息域】紅海・東アフリカ沿岸
【最大全長】約30cm
【飼育難易度】★★☆☆☆
【特徴】マクロスエンゼルの特に小型な幼魚は半透明な尾部と体側に3本の太い白い帯が特徴です。やや成長した個体では背中から腹部にかけて黄色が発現する点で判別できます。
この黄色は成魚になるにつれて尾部と腹部に面積が増やしていき、特に腹部では美しい半月模様になります。近縁種のアズファーエンゼルに似ていますが、本種の体色はやや淡く半月模様は背ビレの末端まで伸びます。

イヤースポットエンゼル

【学名】Pomacanthus chrysurus
【英名】Earspot Angelfish
【生息域】東アフリカ沿岸
【最大全長】約30cm
【飼育難易度】★★☆☆☆
【特徴】別名『クリスルス』。

コルテスエンジェルフィッシュ

【学名】Pomacanthus zonipectus
【英名】Cortez Angelfish
【生息域】東部太平洋
【最大全長】約40cm
【飼育難易度】★★★☆☆
【特徴】

フレンチエンゼル

【学名】Pomacanthus paru
【英名】French Angelfish
【生息域】カリブ海・西部大西洋
【最大全長】約40cm
【飼育難易度】★★★☆☆
【特徴】

グレイエンゼル

【学名】Pomacanthus arcuatus
【英名】Gray Angelfish
【生息域】カリブ海・西部大西洋
【最大全長】約40cm
【飼育難易度】★★★☆☆
【特徴】



3.Holacanthus属

クイーンエンゼルを代表とする大型ヤッコHolacanthus属(ホラカントス属)の仲間で、西部大西洋に住む大型ヤッコがこれに属します。

前述のPomacanthus属(ポマカントス属)に比べて高価な種類が多いですが、飼育自体は容易で初めから人工エサを食べる個体も多く、餌付いていない場合でも冷凍のブラインシュリンプやホワイトシュリンプを与えれば徐々に粒エサを食べ始めます。

Pomacanthus属(ポマカントス属)は丸みを帯びた体高のある種類が多いですが、Holacanthus属(ホラカントス属)の成魚は背ビレと尻ビレの後部が伸び、特にクイーンエンゼルやブルーエンゼルはその流線形の姿が非常に美しく人気高いの種類です。

クイーンエンゼル

【学名】Holacanthus ciliaris
【英名】Queen-Angelfish
【生息域】カリブ海・西部大西洋
【最大全長】約40cm
【飼育難易度】★★★☆☆
【特徴】大西洋に住む大型ヤッコで似た種類にブルーエンゼルがいますが、本種の成魚は尾ビレ完全に黄色く、スレッドにオレンジ色が入る点で区別できます。クイーンエンゼルの特徴でもある長いスレッドを美しく成長させるためには、混泳相手に気を付け、幅・高さ共に広々とした水槽で飼育することが理想です。

ブルーエンゼル

【学名】Holacanthus bermudensis
【英名】Bicolor Angelfish
【生息域】カリブ海・西部大西洋
【最大全長】約40cm
【飼育難易度】★★★☆☆
【特徴】よく似た種類にクイーンエンゼルがいますが、本種の成魚は尾ビレの生え際にかかる背ビレと尻ビレ部分が黄色く、尻ビレの中心ほどまでに体色の色合いを引き継いでいる点で区別できます。クイーンエンゼル同様に長いスレッドを美しく成長させるためには、混泳相手や水槽サイズに注意が必要です。

パッサーエンゼル

【学名】Holacanthus passer
【英名】King Angelfish
【生息域】東部太平洋
【最大全長】約25cm
【飼育難易度】★★★☆☆
【特徴】別名『キングエンゼル』。

ロックビューティー

【学名】Holacanthus tricolor
【英名】Rock Beauty Angelfish
【生息域】カリブ海・西部大西洋
【最大全長】約20cm
【飼育難易度】★★★☆☆
【特徴】幼魚は全体的に黄色の比率が多く身体の後部に黒い斑点があり、成魚はその斑点が次第に大きくなり口が紫色になる美種として人気です。やや神経質な面がありますが、一度水槽に馴染んだロックビューティーは他のヤッコ同様非常に丈夫です。